<Q>
債権には、どのような性質がありますか?
<A>
債権には、次のような性質があります。
直接支配性がない
=債権者(権利者)が権利内容を実現するために、債務者(他人)の行為を必要とする。
排他性がない
=同一の債務者に対して、同一内容の複数の債権(事実上両立しない複数の債権)が存在(併存)しうる。
<解説>
債権の性質は、物権の性質と対比すると、より明確になるため、両者を対比しながら説明します。
ただし、物権と債権の性質論は、やや観念的な話になるので、大まかなイメージをもって頂ければ十分です。
(物権の性質)
物権=特定の物を直接支配して利益を受ける排他的な権利
物権の性質は直接支配性と排他性
・直接支配性=権利者が権利内容を実現するために、他人の行為を必要としない。
・排他性=同一の物の上に、同一内容の複数の物権は存在しえない。
債権とは、特定の者(債権者)が特定の者(債務者)に対して特定の行為を請求する権利です。
物権と対比したときの債権の性質は、直接支配性がないことと、排他性がないことです。
1.債権には直接支配性がない
物権には直接支配性がありますが、債権には直接支配性がありません。
すなわち、債権では、債権者(権利者)が権利内容を実現するために、債務者(他人)の行為を必要とします。
そもそも債権の目的は、債務者の特定の行為ですので、債権の目的を達するためには、常に債務者の行為を必要とするのです。
2.債権には排他性がない
物権には排他性がありますが、債権には排他性がありません。
すなわち、債権では、同一の債務者に対して、同一内容の複数の債権(事実上両立しない複数の債権)が存在(併存)しえます。
例えば、歌手であるA氏(債務者)に対して、東京で劇場を運営するB氏(債権者)と、福岡で劇場を運営するC氏(債権者)が、それぞれ同時刻に自分の劇場に生出演することを請求する権利(債権)を持つことも可能です。
もちろん、上記のようなケースでは、結果的に、一方の債権は履行不能(債務を履行できないこと)となりますが、これは損害賠償の問題として処理されます。
このように、債権では、結果的に一部の債権が履行不能となり、損害賠償の問題として処理されるとしても、同一の債務者に対して、同一内容の複数の債権が存在(併存)すること自体は認められます。
他方、物権では、同一の物の上に、同一内容の複数の物権が存在(併存)すること自体が認められないのです。