債権回収に着手するときは、既に債務者の経済状態が悪化しているので、任意的回収は失敗に終わる可能性が高いと考えるべきです。
そのため、任意的回収の段階で、強制的回収の準備をしておく必要があります。
強制的回収の準備として特に重要なのは「債権の確認」「証拠の確認」「担保の確認」「債務名義の取得」です。
債権の確認
契約書等の資料(証拠)に基づいて、債権の内容を確認します。
消滅時効の時効期間も確認する必要があります。
※商行為によって生じた債権の時効期間は、原則として5年です。
ただし、法律の規定により、特別に短い時効期間が定められている場合があります。
例えば、商品の売掛債権の時効期間は2年です。
証拠の確認
契約書等の証拠が十分に確保されているかどうかを確認します。
証拠が不十分な場合は、証拠を補強しておく必要があります。
証拠の補強として、①債権の存在を債務者自身に認めさせ、②それを形に残しておくことができれば、かなり有利になります。
例えば、次のような方法が採れれば。かなり有利になります。
・債権の存在及び内容を記載した書面に、債務者に署名捺印させて、債権者に交付させる。
・債務者から債権者に対し、債権の存在及び内容を記載したFAXやメールを送信させる。
・債務者に債権の存在及び内容を認める発言をさせて、それを録音しておく。
担保の確認
担保の有無及び内容(特に担保価値)を確認します。
担保が無い又は不十分な場合は、債務者に新たな担保を提供するよう要求します。
※債務者から何らかの要望があった場合(支払期限の延期を求めてきた場合等)は、債務者に新たな担保を要求するチャンスです。
このような場合には、債務者の要望に応えることと引換えに、債務者に新たな担保を要求することを検討します。
債務名義の取得
強制執行をするためには、債務名義という書面が必要です。
この点、債務者の協力が得られれば、裁判所を利用しなくても、「執行受諾文言付き公正証書」という債務名義を取得することができます。
そこで、債務者の協力が得られる段階で、債務者に「執行受諾文言付き公正証書」を作成するよう要求します。
※債務者から何らかの要望があった場合(支払期限の延期を求めてきた場合等)は、債務名義を取得するチャンスです。
このような場合には、債務者の要望に応えることと引換えに、債務者に「執行受諾文言付き公正証書」の作成を要求することを検討します。