債務名義とは
強制執行をするためには、債務名義という書面が必要です。
債務名義とは、債権者の給付請求権の存在を公証する書面をいいます。
どのような書面が債務名義となるかは、法律により定められています。
※給付請求権とは、債務者の一定の行為(これを「給付」といいます)を目的とする請求権をいいます(金銭の支払も「給付」に含まれます)。
当サイトでは、債権回収において多く利用される債務名義について、解説をします。
確定判決
訴訟を提起して、給付判決(金銭の支払等の給付を命じる判決)が言い渡され、判決が確定したときは、この「確定判決」が債務名義になります。
※判決が言い渡されても、上訴(控訴等)をされると、判決は確定しません。
確定判決は、裁判所が、厳格な手続により、証拠に基づいて権利の存否及び範囲等を判断したものであり、最も典型的な債務名義です。
ただし、確定判決を取得するためには、長い期間と多額の費用を要する場合があります(訴訟提起から判決の確定までに2~3年かかることもあります)。
仮執行宣言付き判決
訴訟を提起して、仮執行宣言付きの給付判決が言い渡されたときは、この「仮執行宣言付き判決」が債務名義となります。
すなわち、判決に仮執行宣言が付いたときは、判決の確定を待たずに、強制執行を行うことができます。
※判決に仮執行宣言を付けるかどうかは、裁判所が判断します。
和解調書
訴訟を提起して、訴訟上の和解をしたときは、和解調書が作成されますが、この「和解調書」は債務名義となります。
訴訟上の和解をするためには、債権者と債務者の双方が譲歩をする必要があります。
そこで、訴訟上の和解をするかどうかは、訴訟の勝敗の見込み、紛争を早期に解決する利益、譲歩をすることによる不利益等を総合的に考慮して判断することになります。
仮執行宣言付き支払督促
(債務者の住所地を管轄する)簡易裁判所に支払督促の申立てをすると、一定の要件を充たしている場合は、書類審査のみで、支払督促が発付されます。
そして、債務者が支払督促受領後2週間以内に異議申立てをしないときは、債権者は支払督促に仮執行宣言を付けるよう申し立てることができ、この「仮執行宣言付き支払督促」は債務名義となります。
仮執行宣言付き支払督促は、確定判決と比べて、短い期間と少額の費用で取得することが可能です。
ただし、債務者が異議申立てをすれば、通常の訴訟に移行します。
執行受諾文言付き公正証書
執行受諾文言付き公正証書とは、一定額の金銭の支払等を目的とする請求について作成された公正証書のうち、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述の記載(これを「執行受諾文言」といいます)のあるものをいい、この「執行受諾文言付き公正証書」は債務名義となります。
(執行受諾文言付き)公正証書は、公証役場で、公証人に作成してもらいます。
執行受諾文言付き公正証書は、裁判所を利用せずに、簡便な手続で迅速に取得することが可能な債務名義です。
ただし、執行受諾文言付き公正証書を取得するには、債務者の協力が必要です。
(債務者の協力を得られる段階で取得しておく必要があります)